騒音・振動トラブル
はじめに
建築工事の実施によって工事の騒音や振動が発生し、近隣住民の生活に重大な影響が生じることがあります。
建築工事によって生じる騒音・振動については公法上の規制がなされており、工事の施行者が、こうした規制に違反して工事を行っている場合には、行政庁を通して規制の遵守を求めることができる場合があります。
また、近隣住民が、工事の騒音・振動によって損害を被った場合には、施工主に対して、損害賠償を請求することができる場合があります。
騒音・振動トラブルの対応方法
公法上の規制について
建築工事によって生じる騒音と振動に関しては、騒音規制法、振動規制法によって規制がされています。 騒音規制法の規制対象は、各都道府県知事が指定する地域における、建設物の解体・破壊作業、掘削作業、くい打設作業などの特定建設作業であり、これらの特定建設作業について騒音の規制基準を定めています。
同法に基づく騒音規制基準は、建設作業場所の敷地の境界線において85dBを超えないこと、住居区域等の地域では、作業禁止時間帯を午後7時から翌日午前7時までとすること、1日の作業時間が10時間とすることなどが定められています。
工事施工主の工事がこれらの基準に適合しないことにより、周辺の生活環境が著しく損なわれる場合には、市町村長は、施工主に対して改善勧告を行うことができ、また、改善勧告に従わない場合には改善命令を出すことができることと規定されています。
また、振動規制法においても、上記と同様の規制がされています。
民事法上の対応
建築工事の騒音・振動に関する民事上の対応としては、工事の施工主に対する工事の差止請求や、損害賠償請求が考えられます。 しかし、騒音・振動の場合、騒音や振動が発生するのが工事期間中に限定され、比較的短期間であること、また、騒音・振動の内容や程度も工事の進捗状況により変化していくことから、現実的には工事の差止めを求めることは難しいかと思われます。 したがって、差止請求よりも損害賠償請求を行う方が一般的な対応策かと思われます。
損害賠償請求を行う場合の損害としては、大きく分けて、物的損害と精神的・肉体的損害が考えられます。 物的損害については、工事の振動による家屋の損傷などがこれに該当します。損傷した家屋の修補費用等を請求する場合には、工事の振動と家屋の損傷との間の因果関係等が問題となります。
また、精神的損害・肉体的損害を請求する場合、騒音・振動が一般社会生活上受忍すべき程度を超えている場合には、不法行為が成立し、慰謝料請求が認められます。 受忍限度を超えているか否かの判断に際しては、侵害の態様・程度、被害の内容・程度、地域性、加害者の被害回避措置の有無等を総合的に考慮して判断されます。