賃貸借契約が法定更新された場合に、更新料を請求できるか?

はじめに

今回は、賃貸借契約の更新料のお話です。
建物賃貸借契約では、多くの場合、契約期間満了時に、1~2カ月分の賃料相当額の更新料を賃借人が支払うことによって、同一の条件で契約が更新される旨が規定されています。

それでは、こうした規定があるにも関わらず、賃借人が更新料を支払わない場合、賃貸人と賃借人との契約関係はどうなるのでしょうか?
また、この場合に、賃貸人は賃借人に対して、更新料の支払いを請求できるのでしょうか?

更新料の支払請求については、賃貸借契約書の記載内容により結論が分かれる可能性があるため、賃貸人の方は注意が必要です。

法定更新について

普通賃貸借契約において、契約期間満了の1年前から6カ月前までに、当事者が契約を更新しない旨の通知をしない限り、賃貸借契約は、期間の定めのない賃貸借契約として更新されることになります(借地借家法第26条第1項)。これを賃貸借契約の「法定更新」といいます。
したがって、賃借人が更新料を支払わない場合でも、賃貸人が更新拒絶をしないまま契約期間満了を迎えれば、賃貸借契約は法定更新されることになります。

契約が法定更新された場合、賃貸借契約は期間の定めがないものとなりますが、賃貸人の意思で賃貸借契約を終了させようとする場合、6カ月前に解約の申し入れをしなければならず、また、この解約申し入れの際には、「正当事由」が必要となります(場合によっては、立退料の支払いが必要になります。詳しくはこちらをご覧ください)。

つまり、賃貸人側にとっては、賃借人が更新料を支払わずに契約が法定更新された場合であっても、賃貸借契約を容易に終了させられないという点では変わりはありません。

更新料の支払い請求について

法定更新がなされた場合の更新料請求の可否については、賃貸借契約書の記載内容により、結論が分かれる可能性があります。

契約書に明記がある場合

まず、賃貸借契約書において「更新の際、賃借人は賃貸人に対し、更新料として新賃料の〇カ月分を支払う。」とのみ記載されており、法定更新された場合について特に記載がない場合に関しては、賃貸人による更新料請求の可否は、裁判例により結論が分かれています。

東京地方裁判所平成9年6月5日判決では、上記同様の文言の記載がされている場合に、法定更新の場合にも賃借人が更新料支払い義務を負うと判断しています。
一方、東京地方裁判所平成9年1月28日判決は、やはり同様の文言の場合に、更新料支払いの約定は法定更新の場合には適用されないとの判断を下しています。

この点に関しては最高裁判所の判断が待たれるところではありますが、いずれにせよ、現段階では、賃貸人側からすると、更新料請求が否定される可能性があるため、上記の文言のみを記載することはリスクがあると思われます。

契約書に明記がある場合

次に、賃貸借契約書において、「法定更新であるか、合意更新であるかに関わりなく、更新料として賃料の〇カ月分を支払う。」と明記されている場合には、賃貸人は、賃借人に対して更新料の支払いを請求することができると考えられています。

実際に、最高裁判所平成23年7月15日判決では、「本件賃貸借契約を更新するときは、これが法定更新であるか、合意更新であるかにかかわりなく、1年経過するごとに、賃貸人に対し、更新料として賃料の2か月分を支払わなければならない」との条項が記載されている場合において、更新料の支払いを肯定しています。
(なお、この判例は、更新料の支払い条項が、消費者契約法10条に違反せずに有効であるとの判断を下した判例ということで広く知られております。)

まとめ

このように、法定更新の場合に更新料を請求できるかという点については、少なくとも現時点では、賃貸借契約書の記載内容により結論が異なる可能性があります。
したがいまして、賃貸物件のオーナーの皆様には、これから締結する賃貸借契約に関しては、「法定更新であるか、合意更新であるかに関わりなく、更新料として賃料の〇カ月分を支払う。」との文言を記載することをお勧めします。

(弁護士 利根川竜一)

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